2026年4月、関西国際空港 第2ターミナル(国内線)が新しく生まれ変わりました。開業以来初となる大規模改修では、航空需要の拡大を見据え、より便利で居心地の良い空間へと、空港体験そのものをアップデートしています。
今回はリノベーションに携わった関西エアポート株式会社(以下、関西エアポート)とPeach Aviation株式会社(以下、Peach)の各担当者に、プロジェクトの舞台裏をうかがいました。
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H.E
Peach Aviation株式会社 空港業務推進部 空港マネジメント課に所属。就航やリノベーションにおける管理運営に関わる業務を担当。
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S.M
関西エアポート株式会社 運用本部 関西空港運用部 関西空港運用調整グループに所属。関西国際空港 第2ターミナルの担当として運用に関わるエアライン窓口を担当。
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U.R
関西エアポート株式会社 技術本部 建築技術部 施設計画グループ(取材当時)に所属。空港の建物の設計、工事における調整、維持管理を担当。
増え続ける航空需要と混雑解消に向けて。開業から14年経て挑んだリノベーション
関西国際空港 第2ターミナル(国内線)のリノベーションが完成し、2026年4月1日にお披露目となりました。まず、今回の大規模改修を行った経緯について教えてください。
最初にリノベーションの話題が上がったのが2023年の秋ごろでした。会社として正式に取り組みを開始したのが2024年の6月です。
まずは現状の第2ターミナルが抱える課題や改善要望について、Peachの皆さんにヒアリングを行いました。ちょうどPeachのブランドリニューアルの時期とも重なっていたため、デザインや利便性の向上など、両者が目指す方向性を整理するところからスタートしました。

国内線の第2ターミナルは2012年の開業以来、Peachの国内線拠点の1つとして多くのお客さまにご利用いただいてきました。一方で、設備の老朽化や利用者数の増加に伴い、改善すべき課題も見えてきていました。とくにチェックインカウンター周辺の混雑や保安検査場の待ち時間は、お客さまがストレスを感じやすいポイントでした。

空港としても、今後さらに航空需要が拡大していくことを見据えて、リノベーションに踏み切りました。今回のリノベーションは、単に設備を新しくするだけでなく「よりスムーズで快適な空港体験」をめざし、空港とエアラインが一体となって取り組んだプロジェクトです。
私たち3名は最初期からプロジェクトに携わってきました。具体的なスケジュールや予算、出来上がりのイメージなど、日ごろからよく連絡を取りあっていましたね。

今回のプロジェクトにおける3名の役割を教えてください。
私はPeach側の調整窓口として、各所との合意形成や進行管理を担いました。ストレスフリーな空港の実現に向けて、最先端機器の導入や各エリアのレイアウト設計において、空港側の窓口であるS.Mさんとはとくに密に連絡を取り合いました。
私は空港側の調整窓口として、社内外の関係者とのコミュニケーションを調整しました。今回のような、長期にわたる大規模プロジェクトに携わるのは初めての経験でしたね。
私は建築担当として、設計の検討段階から携わりました。施設の制約を踏まえつつ、設計会社や施工会社、関係部署と連携して計画を進めました。
Peachのブランドロゴも変わりましたね。新しいブランドイメージと空港デザインを融合するための工夫とは?
今回のリノベーションは、Peachのブランド刷新のタイミングとも重なりました。これまでのPeachは元気で親しみやすいイメージを大切にしてきましたが、新しいブランドイメージでは親しみやすさはそのままに、優しく落ち着いた世界観をめざしています。
空間デザインを考えるうえでも、そのブランドイメージを重視しました。搭乗待合室の什器や各種サイネージのビジュアル要素なども、Peachの新しいブランドイメージと親和性の高い、落ち着いた温かみのある色合いやデザインを取り入れています。
空港とエアラインの密な連携で実現したストレスフリーな空間
具体的にどんなところがリノベーションされたのでしょうか?
大きく変わったのはPeachのチェックインカウンターと保安検査場エリアです。チェックインカウンターは位置を大きく移動し、スムーズな動線を確保しました。また、当初2台しかなかった手荷物預けの検査機器を10台に増やし、自動手荷物預け機に変更したことで、大幅な混雑解消が実現でき、待ち時間なくご利用いただけるようになりました。
老朽化していた保安検査場の機器も一新し、カバンの中に液体物やパソコンを入れたまま検査できるものになりました。保安検査場エリア自体を拡張したので、より多くのお客さまを一度に受け入れることができるようになりました。

プロジェクトでもっとも調整が難しかった部分はどこですか。
もっとも時間をかけて議論したのはチェックインカウンター周辺です。今回はカウンターの位置を大きく変更しましたが、空港には防火シャッターや配線設備などさまざまな制約があります。そのなかで「お客さまにとって分かりやすく、スタッフにとっても使いやすい空間」をどう実現するか、何度も検討を重ねました。
Peachのチェックインカウンターにユニバーサルデザインカウンターの導入を決定した際、時間も人手も余裕がなかったため、Peachさん側で実物大の試作を手作りしていただきました。車いすでも使いやすい高さやサイズ感を試行錯誤しながら調整しました。
お客さまの快適性を向上するには、安全性や運用面に加え、デザイン面の調整も重要です。例えば、設備の配線がお客さまの目に触れないよう、床に加工を施して隠すとか。そうした一目ではわからないような工夫の積み重ねが、居心地の良いストレスフリーな空港づくりにつながっていると信じています。

365日動き続ける空港をリノベーションするのは、通常の施工と異なる難しさがあったのではないでしょうか?
そうですね。通常の建築工事であれば、一度施設を閉鎖して施工できますが、空港は毎日運航しています。そのため工事を細かい段階に分け、完成したエリアから順次、利用を開始する方法を取りました。
工事期間中もPeachの運航は続いていますので、お客さまや現場スタッフへの影響をいかに最小限にするかが課題でした。
利用者の皆さまにできるだけ不便を感じさせないよう、空港とエアラインが密に連携できたからこそ実現できたプロジェクトだったと思います。
迷わず進める動線と、心地よい待合エリア。利用者に寄り添う空間づくり

実際に利用者が感じる変化はどこにありますか?
以前はターミナルに入ったあと、どこに向かえばいいのか迷われるお客さまもいらっしゃいました。しかし今回、チェックインカウンターから保安検査場までの動線を整理したことで、より直感的に利用できる空間になりました。手続き時間が短縮された分、ぜひ待合エリアでの心地よい時間を体験していただきたいですね。
保安検査場はどうしても緊張感が生まれる場所ですが、今回、ターミナルとの仕切りをガラス壁にすることで、圧迫感を感じにくいよう工夫しています。待合エリアの壁もできるだけ取り払い、より開放感のある空間にしました。充電設備を大幅に増やしたことで、パソコンやスマホの利用環境もさらに快適になったと思います。
ほかに、ぜひここは注目してほしいというポイントはありますか?
保安検査場の入口に設置した大型LEDディスプレイです。ディスプレイサイズが大きくなり、フライト情報だけでなく、館内案内やマップも表示されるので、とても見やすくなりました。じつは、時刻の背景画像にはPeachの就航地の写真が使われています。細かな部分ですが、旅への期待感を高める演出として取り入れました。

完成はゴールではない。空港は運用しながら進化する
今回のリノベーションに限らず、普段からどのような連携を取られているのでしょうか? より良い空港を一緒につくるために工夫していることがあれば教えてください。
Peachさんとは日常的によく連絡を取っています。メールもありますが、電話で相談することも多いですね。少しでも気になることがあれば、その場で確認するようにしています。
Peachでは、お客さまや現場スタッフから寄せられた声をもとに運営の改善を進めています。空港とエアラインで意見が異なるときは、その理由も共有しながら良い折衷案を探しています。S.Mさんとは長年のやり取りのなかで率直に意見を言い合える信頼関係ができていると思います。

今後、空港とエアラインが協力して、新たに取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
リノベーションは完成しましたが、これで終わりではありません。実際に運用して初めて見えてくる課題もありますから。今後は利用者数や顧客満足度などのデータも用いながら、改善を続けていきたいと思っています。
今回のリノベーションは国内線だけでしたが、次は国際線エリアのさらなるDX化などにも取り組み、よりストレスなく利用できる空港をめざしたいです。
設備を新しくするだけではなく、それがお客さまにきちんと伝わり、本当に使いやすい状態になっているかが重要です。利用者とエアライン双方の声を聞きながら、これからもアップデートを続けていきたいと思います。

“Fly High”とは
より高みをめざし、未来を拓く取り組みを続ける関西エアポートグループの裏側には、空港を支えるたくさんの人の努力や願いが詰まっています。
「Fly High」では空港で働く人、空港とともに育った人、飛行機が好きな人、十人十色なストーリーを通じて、空港に携わる人たちの仕事に懸ける思いと描く未来をお伝えします。