海底のすぐ下に堆積している軟らかい沖積粘土層は、どこの海岸にも堆積しているような粘土で、昔から技術的にも沈下対策がなされ、その性質についての知識やその対策の経験が豊富です。関西国際空港ではサンドドレーン工法による地盤改良を行いました。
一方、その下にある洪積粘土層の地層は、世界的にも珍しくサンドイッチ状にとても深くまで堆積しているため、地盤改良は困難であり、長期的な沈下が継続することを前提に空港施設を管理しています。
沖積層の沈下対策
サンドドレーン工法の導入
関西国際空港の島の重みにより、沖積粘土層は本来の厚さの3分の2まで沈下します。この沈下が不均一に起こると空港施設に悪影響を及ぼすため、地盤改良が不可欠でした。沈下自体を防ぐことはできませんが、サンドドレーン工法による地盤改良を実施することで沈下を人工的に促進し、通常数十年かかる沈下過程を1年以内に完了させることに成功しました。

サンドドレーン工法のしくみ

サンドドレーン用の船
サンドドレーンの施工実績及び効果
サンドドレーン工法とは、島の沈下を促進させるために、粘土層に砂の杭を打ち込んで排水性を向上させる工法です。1期島では2.5m間隔で長さ20mの砂杭を100万本、2期島では120万本を設置しました。この規模は、昭和27年から関空工事開始までの35年間における全国での施工本数90万本を大幅に上回るものです。工事開始以来の沈下データによれば、サンドドレーンは期待通りの効果を発揮し、島の造成から1年以内に沈下が収束しました。その後はほとんど沈下していないことが分かります。

沖積層沈下の状況
洪積層の沈下状況
自然状態での緩やかな沈下進行
現在進行中の長期的な沈下は洪積層で発生しています。洪積粘土層は深さと厚みが大きいため地盤改良が困難であり、自然状態で徐々に沈下が進んでいます。
1期島の洪積粘土層の沈下データによると、水中での埋め立て期間中は土砂も水中にあって軽いため、島の重量が洪積粘土層の強度を超えることはなく、ほとんど沈下は生じませんでした。しかし、埋め立てが水面上に現れた時点で沈下が始まりました。沈下は当初、急速に進行していましたが、次第に緩やかになり、近年では年間10㎝を下回るまでに減少しています。

洪積層沈下の状況(1期島計測点17)
洪積層は厚さが400mにも及び、その性質は深さによって大きく異なります。堆積年代や粘土の固さなどの特徴から、主に上部と下部に分類されています。
1期島・現在の沈下状況(2024年12月時点)
1期島では、工事開始から今日まで海底地盤の沈下を17点で計測してきました。この測定値は沖積層と洪積層を合わせた全体の沈下量を示しています。沖積層は埋立完了後1年以内に沈下が収束したため、開港後の沈下はほぼ洪積層のみによるものと考えられます。
2024年12月の計測結果では、直近1年間の17点における平均沈下量は6cmでした。粘土層の厚さや埋め立て重量の違い等により、測定点ごとの沈下量には差異が見られますが、1994年の開港から現在までの平均沈下量は3.84m、埋め立て開始から開港までの沈下量(9.82m)と合わせた総沈下量は13.66mとなっています。

沈下計測点
2期島・現在の沈下状況(2024年12月時点)
2期島では、工事開始から今日まで海底地盤の沈下を54地点で計測しています。この測定値は沖積層と洪積層を合わせた全体の沈下量を示しています。沖積層は2期島施設の供用開始までに沈下が収束したため、供用後の沈下はほぼ洪積層のみによるものと考えられます。
2024年12月の計測では、直近1年間の54地点における平均沈下量は21cmとなりました。2007年の供用開始から現在までの平均沈下量は5.76m、埋立開始から供用開始までの沈下量(11.71m)と合わせた総沈下量は17.47mとなっています。

沈下計測位置
今後の沈下をより正確に予測するには、全体的な収束傾向の確認と、2期島が1期島の砂層水圧と長期的沈下に与える影響、また洪積層の沈下収束状況といった詳細な分析が必要です。今後も沈下データの継続的な蓄積と専門家の指導のもと、慎重にモニタリングを続けていきます。