洪積層の上部は、厚さが140m程度で、10層の砂層と、これに挟まれた9層の粘土層で構成されています。これらの粘土層に含まれる水が、空港島の重さによって粘土層の上下にある砂層に押し出されることで、粘土層に沈下が生じます。粘土層から押し出された水は、粘土層の上下の砂層を通って、島の周囲に抜けていきます。
沈下の速さは、砂層を通る水がどれだけ速く島の周囲に抜け出るか(砂層の排水性)によって大きく変わります。10層の砂層の中には、水の通りやすい厚い砂層もあれば、通りにくい薄い砂層もあります。また、砂層が途中でなくなっている場合には、その砂層は水の通り道にならず、その上下の粘土の沈下は非常に遅くなります。
【洪積層上部の沈下イメージ】
1つの島だけが作られ、その重みで長期的な沈下が起きる場合には、このようなイメージで沈下が進みます。これまでの1期島の沈下や、これからの2期島の沈下は、このような様子であろうと思われます。
しかし、これからの1期島の沈下では、さらに複雑な現象が起きるものと考えられます。
1期島が作られて10年経ち、その横に2期島が姿を現しました。この2期島の沈下によって押し出された砂層の水は、1期島の下の砂層の流れに大きな影響を及ぼすと考えられるのです。「水枕現象」などと例えられる現象です。
【水枕現象のイメージ】
この現象が起こりうることは、以前から想定されていました。
1期島が供用した直後の1994年に、1期島から1km以上離れた2期島の建設予定海域で、400mの深さまでのボーリング調査を行いました。その結果、海の底の砂層の水圧が、10tf/m2程度も高くなっているというデータが得られ、510haにも及ぶ空港島の海底の粘土から絞り出された水が、かなり広範囲に広がっていることが確認されました。このことから、逆に2期島を作れば、1期島の下の砂層の水圧も上昇することが想定されたのです。
現に、2期島がかなり広範囲に水面上に姿を現してきたここ数年で、砂層の水圧が顕著に上がっているというデータが、1期島の観測点から得られています。
この水圧の上昇が、1期島の沈下とどのような関わりをもつのかという点は、今後の沈下を見通すうえで重要です。これからどのように水圧が上昇していくのか、あるいは、長期的にどのように変化していくのか、さらに、砂の水圧が上昇や低下をしていくことが粘土の沈下にどのような影響をもたらすのかといったことは、さらに長期間のデータを蓄積し、解析・評価を行っていくことが必要です。