ジャッキアップなどの不同沈下対策 -海上空港としての技術(4)-

土地が均一に沈下した場合、空港施設への影響はありませんが、場所によって沈下量が異なる「不同沈下」の場合には、構造物にゆがみが生じる問題が発生します。建物は特に影響を受けやすく、わずかな不同沈下でも深刻な問題となるため、関西国際空港では以下の対策を実施しています。

ジャッキアップシステム

ジャッキアップシステムは、不同沈下によって建物にわずかな傾きが出てきた場合に、建物の1本1本の柱をジャッキで持ち上げて鉄板のプレートを挟み、建物の傾きを調整するしくみです。

地下室を設けることによる影響

空港を代表する巨大な建物であるターミナルビルの中央本館部分には、大きな地下室があります。この地下室を設けるために、土を取り除く必要がありましたが、建物の重量が除去した土の重量より軽くなることが予測されたため、本館の底に鉄鉱石を重しとして敷き詰めました。それでもなお中央本館は周辺部より若干軽い状態となっています。この結果、本館部分の沈下が周囲より少なく、両サイドのウィングとの間にわずかな傾斜が生じています。これを修正するために、ジャッキアップを行って床を平らにしています。

自動計測システム

第1ターミナルビルには900本の柱があり、各柱の沈下を自動システムで計測しています。この計測データに基づき、必要な柱を特定してジャッキアップ作業を実施しています。

定期的なジャッキアップ作業

現在は、地盤沈下が徐々に安定してきたことで不同沈下も減少しています。また傾斜も肉眼では確認できないほどわずかなものですが、数年に1回の頻度でジャッキアップを実施しています。

ジャッキアップシステムによる建物の不同沈下修正プロセスを示した3段階の図解です。初期状態は旅客ターミナルビルが地盤の上に水平に建っています。不同沈下の発生は地盤が不均一に沈下し、建物の中心部が両端のウィング部分より低く沈み込み、湾曲しています。修正完了はジャッキアップによって建物全体が持ち上げられ、再び水平な状態に修正されています。

ジャッキアップシステムのイメージ(1)

建物の柱をジャッキアップする工法の技術的な手順を示した3段階の図解。左の図で杭基礎の上にある建物の柱を示し、中央の図では油圧ジャッキで柱を持ち上げて隙間を作り、そこに鉄板を挿入する様子。右の図は、油圧ジャッキが取り外され、挿入された鉄板によって柱が高く固定された工事完了後の状態を示しています。

ジャッキアップシステムのイメージ(2)

旅客ターミナルビルの不同沈下と、ジャッキアップによる対策効果を示したグラフ。上部がターミナルビル(南ウィング、本館、北ウィング)の模式図で、その下にあるグラフは、建物の位置に対応しており、2本の曲線で沈下状況を表しています。不同沈下量を示す赤い線は建物の基礎部分が不均一に沈下し、特に南ウイングが最も深く沈んでいることが分かります。1階床高さを示す青い線は赤い線で示された沈下に対し、ジャッキアップによって床面が持ち上げられ、床の高さがほぼ水平に補正されている状態を示しています。

ターミナルビルの不同沈下対策状況(H19.12現在)

作業員がジャッキアップされた建物の基礎部分の隙間に、高さ調整用の鉄板を一枚ずつ手で慎重に挿入している様子の写真。

ターミナルビル柱のジャッキアップのしくみ

作業員が、高さ調整用の鉄板を一枚ずつ手で慎重に挿入している様子の手元のクローズアップ写真。

その他 さまざまな対策

ジャッキアップ以外の対策

島全体の重量が一定であれば、地表の沈下量に違いが生まれる可能性を抑えることができます。
そのため、関西国際空港では、ジャッキアップ以外にも下記のような対策を新築時に実施しています。

具体的な取り組み

ベタ基礎工法 コンクリートの土台を地面に直接設置する工法。不同沈下時に建物全体が均等に沈下する特性を持つ。
埋立層の締固め 深さ30mの埋立地盤について、地震時の圧縮を防止するための地盤締固めを実施。
排土バランスの調整 建物荷重と周辺地盤との荷重差を最小限に抑えるため、必要に応じて土量調整を実施。

これらの総合的な対策により、1期島の沈下は、深くて均一な洪積層の沈下が主な原因となっています。
その結果、滑走路や誘導路といった基本施設において、運用上問題となるような不同沈下はほとんど生じていません。