空港という“一つの街”からの取り組み発信で地域社会に貢献していきたい。「環境ビジョン2050」がめざす未来

関西エアポートグループで環境推進を行うKさんの写真/Photo of Ms. K, a Kansai Airports Group staff member who is involved in promoting the Group’s environmental initiatives

「持続可能な社会の実現」――。
世界中で重要視されているこの課題に、関西エアポートグループも長年にわたり真剣に向き合ってきました。「脱炭素、経済循環、環境共生」をキーワードに、さまざまな環境問題に取り組む環境推進グループのKさんに、関西エアポートグループがめざす持続可能な未来について伺います。

  • 関西エアポートグループで環境推進を行うKさんの写真/Photo of Ms. K, a Kansai Airports Group staff member who is involved in promoting the Group’s environmental initiatives

    K.H

    関西エアポート株式会社 技術本部 技術統括部 環境推進グループに所属。2009年に新卒で入社後、騒音監視業務や島内道路の維持管理、連絡橋維持関連業務、大阪国際空港のリニューアル工事、技術部門の予算管理などに携わる。産休、育休を経て2024年より環境推進グループで環境の取り組みを推進する業務に注力する。

世界共通の環境問題に取り組むことで、地域に存在感を示すことができたら

関西エアポートグループで環境推進に取り組むKさんのインタビュー写真/Photo of Ms. K, a Kansai Airports Group staff member who is involved in promoting the Group’s environmental initiatives, being interviewed

ーーKさんは、日ごろどんな業務にあたっているのですか?

社内各部門やグループ会社の責任者で構成される「関西エアポートグループ環境推進委員会」の運営を通じて、グループが一丸となって環境の取り組みを進めていくために尽力しています。昨年度はグループ全社員の意識醸成のための研修計画や、社内外のコミュニケーションツールとしての環境レポートの企画・とりまとめに携わりました。現在は会社ホームページの環境関連ページの作成も行っています。

 

ーー関西エアポートグループの環境の取り組みの指針となっている「環境ビジョン2050」とは、どのような内容になっているのでしょうか?

「環境ビジョン2050」は関西エアポートグループが、持続可能な社会の実現に貢献するために策定しました。事業を継続するためには、社会・経済活動が継続することが大前提。そのために私たち関西エアポートグループも一企業として、責任をもって取り組む必要があると考えています。

 

ーー具体的にどのような計画が進められているのでしょうか?

脱炭素、循環経済、環境共生の3つの軸を中心に計画を進めています。脱炭素では「関西エアポートグループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量実質ゼロ」、循環経済では「廃棄物の資源化率100%」、環境共生では「空港周辺の健全な生活環境の確保」、「生物多様性の保全」などをめざしています。

環境ビジョン2050 ・ 環境目標2030の図版/Diagram of Environmental Vision 2050 and Environmental Goals 2030

ーーなぜ、「脱炭素、循環経済、環境共生」を3つの軸に定めたのでしょうか?

世界共通の危機である「気候変動」「生物多様性の損失及び汚染」「資源の枯渇」と空港活動をリンクさせて、「気候変動への対応(=脱炭素)」「持続可能な形での資源利用(=循環経済)」「周辺環境及び自然との共生(=環境共生)」を取り組みテーマとした3つの軸を定めました。空港というのは経済成長を象徴しながらも、かつては迷惑施設とも言われた場所です。だからこそ、世界共通の環境問題に取り組むことで、地域に新たな存在感を示していけたらと思っています。

 

ーー関西エアポートグループが「環境ビジョン2050」に込めた思いを教えてください。

関西地域をバックグラウンドとして、公共インフラを担う私たち関西エアポートグループは今、「環境」を切り口に地域と連携し「環境」の問題解決にチャレンジしようとしています。「環境ビジョン2050」の実現に向けて活動することで「アイデアを実現できる企業である」ことを、地域社会の皆さまに認識いただけるといいですね。

「環境ビジョン2050」実現のための3つの取り組み

ーー「環境ビジョン2050」、そして「環境目標2030」を実現するために実施している、関西エアポートグループならではの取り組みを教えてください。

「Sora×Solar®」「水素エネルギー」「藻場プロジェクト」の3つです。

国内空港で最大規模!「Sora×Solar®」で電力の地産地消を実現

太陽光発電設備「Sora×Solar®」の写真/Photo of Sora×Solar®, a solar power generation facility

ーーまず、太陽光発電設備「Sora×Solar®」について教えてください。

Sora×Solar®では、オンサイト型PPA(Power Purchase Agreement)方式(*)を採用。関西国際空港と大阪国際空港に合計約4万枚の太陽光パネルを設置し、発電した電力を空港内で使用しています。

*発電事業者が需要家(電力使用者)の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用で設置し、所有・維持管理を行う。そのうえで、発電設備から発電された電気をその需要家に供給する仕組み

 

ーー4万枚!かなり規模が大きいように聞こえますが…。

国内空港として最大、国内PPA事業としても最大級規模の発電量を見込んでいます。「Sora×Solar®」は温室効果ガス排出量の削減目標を達成するための重要な取り組みの一つですし、「自らが使うエネルギーを自ら準備する」ことを関西エアポートグループが真剣に考えた成果だと思います。

 

ーー「Sora×Solar®」を導入することで、どのくらいの温室効果ガス排出量削減が期待できるのでしょうか?

関西エアポートグループのCO2排出量の約15%(*)を見込んでいます。ちなみに「Sora×Solar®」で発電された電気をターミナルビルの照明などで使い、電力の「地産地消」を行っています。

*2025年度の発電量の見込みと2023年度のCO2排出量をもとに計算

 

ーー「Sora×Solar®」の今後の目標や課題は?

昼間の時間帯は、発電された電気を空港内で有効に使うことができるようになってきていますが、問題はそれが余ったとき。せっかく発電をしても使いきれないともったいないですよね。次のステップとして、できる限りエネルギーを効率よく使えるように改良していくことが課題の一つです。

次世代のクリーンエネルギーとして注目!「水素」の利活用

水素エネルギーで動く燃料電池フォークリフトの写真/Photo of a hydrogen-powered fuel cell forklift

ーー次に「水素エネルギー」について教えてください。

燃焼時に排気ガスを出さない水素は、次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。関西エアポートグループでは、国内の空港で初めて商用水素ステーションを導入しました。関西国際空港には燃料電池産業車両用の水素充填施設も設置されていて、今後の燃料電池車両の拡充に備えたインフラが整備されているんです。

 

ーー水素エネルギーはどのように利活用されているのでしょうか?

たとえば関西国際空港の島内では、水素エネルギーで動く燃料電池フォークリフトや、燃料電池バスが稼働しています。電気自動車に比べて、燃料電池車両の水素充填時間は非常に短く、柔軟な運用ができます。排気ガスもなく走行音も静かだと、現場からは利活用に対してポジティブな声が多いですね。

 

ーー水素は、環境共生をめざす空港という場所にとって、今後ますます欠かせないエネルギーになっていきますね。

そうですね。水素エネルギーは将来、航空機への燃料転換も期待されているので、その実現にも貢献できるよう取り組みを継続していきたいと考えています。また、「Sora×Solar®」で発電した電気と水素を組み合わせた取り組みも模索していけたらと思っています。少し時間はかかるかもしれませんが、エネルギーの特性と空港の特性をうまく組み合わせることで温室効果ガスの削減量を最大化し、「環境ビジョン2050」の達成につなげていけたらと思っています。

大阪湾の豊かな生態系を守る「藻場プロジェクト」

関西国際空港の藻場の写真/Photo of a seaweed bed around Kansai International Airport

ーー3つ目に、「藻場プロジェクト」について教えてください。

関西国際空港は世界初の本格的な海上空港として、計画段階から海域環境との調和をめざし、海域生物の生育場となる藻場環境の創造に積極的に取り組んできました。護岸の大部分に緩傾斜石積護岸を採用することで広い範囲に光が届き、CO2を吸収する海藻が育ちやすい環境が広がっています。

 

ーー海藻が育ちやすい環境を作るほかには、どんな取り組みをしているのでしょうか?

モニタリングの継続と、その結果をふまえた藻場の保全に、積極的に取り組んでいます。取り組みを長年継続してきたことで、豊かな藻場環境が維持され、海の生態系の多様性につながっているんです。他にも、子どもたちに「環境」に関心を持ってもらうきっかけになればと、藻場や空港での環境取り組みを紹介するツアーを小学生を対象に行っています。

 

ーー子どもたちにも環境問題を身近に感じてもらう大切な取り組みですね。今後はどのような展望を考えていますか?

関西国際空港の造成時から育んできた藻場の取り組みを、空港周辺だけでなく、大阪湾全体の生態系を豊かにする取り組みに発展させていければと思っていて、地域との連携にも積極的に取り組んでいます。現在はまだ難しいですが、周辺地域の漁業や、豊かな食生活の維持にもつながる取り組みになるといいなと考えています。

 

変わる「環境」への意識。子どもたちに引き継ぐ未来のために

関西エアポートグループで環境推進を行うKさんの写真/Photo of Ms. K, a Kansai Airports Group staff member who is involved in promoting the Group’s environmental initiatives

ーーKさんは「環境ビジョン2050」そして、「環境目標2030」の実現に向けて、どんな期待感をもっていますか?

水素エネルギーの活用や廃棄物処理といった、空港という一つの街のようなフィールドを生かした実証などを通じて、新たな技術を社会に送り出す一助となるような事例が今後も増えていくといいなと思っています。

 

ーー環境問題に携わるようになったことで、ご自身の中で変わってきたことはありますか?

母になったことで意識が変わったように思います。気候変動によって秋刀魚の漁獲量が激減したり、お米の収穫量が減って値段が高騰している現状に直面したときに「この子たちが大きくなったとき、日本はどうなっているんだろう?」と、子どもたちが暮らす未来を想像することで、環境問題を自分事ととらえられるようになってきていると思います。

 

ーー長年、関西エアポートグループで勤務してきて、環境問題に対する社内の考え方の変化などは感じていますか?

今から10年以上前、騒音対策について取り組んでいたときは、「環境担当が環境取り組みを頑張る」という運用領域が中心だったと思います。それが、環境担当者だけでなくグループ全体として取り組むという方向に、意識や考え方が変化しているのを感じますね。どんどん良い方向に進んでいるのではないでしょうか。

 

ーー最後に、環境問題に今後も取り組んでいくうえでの目標を聞かせてください。

まずは「環境目標2030」を必ず達成させたいと思っています。そのために、関西エアポートグループ社員の日々の業務に「環境」という視点を加えていくこと、そこにチャレンジの種や自己実現の可能性があるのではないかということを伝えていきたいと思っています。

 

ーー目標達成の先に、どんな未来を思い描いていますか?

今のポジションに就いてから、いろいろな企業の方々とさまざまなお話をする機会が増えたのですが、環境問題に対して意識を強くもって、何かを実行したいという声が多いです。関西エアポートグループも自分たちだけで実現できる環境問題に対する取り組みはごく一部なので、企業と企業がつながって何かチャレンジできれば、「環境ビジョン2050」の達成に近づいていくのではないかと期待しています。今取り組んでいることが、自分の子どもたちが安心して暮らせることはもちろん、より多くの人の仕事のやりがいに内包されていったらいいですね。

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“Fly High”とは

より高みをめざし、未来を拓く取り組みを続ける関西エアポートグループの裏側には、空港を支えるたくさんの人の努力や願いが詰まっています。

「Fly High」では空港で働く人、空港とともに育った人、飛行機が好きな人、十人十色なストーリーを通じて、空港に携わる人たちの仕事に懸ける思いと描く未来をお伝えします。